①笛柱
②脇柱
③角(目付)柱
④シテ柱
⑤狂言柱
⑥後見柱
⑦アラシ窓
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特集
佐渡南部に位置する「羽茂」。ここでは、古くから「能」が盛んに行われてきました。 現在佐渡には、30以上の能舞台があると言われておりますが、そのうち6つの能舞台が羽茂に残されています。そのほとんどは、神社の境内に存在しています。
「能」=「世阿弥」というイメージを持たれる方が多いと思います。しかし実際は、江戸時代に初代佐渡奉行であり能楽師でもあった大久保長安が、奈良から2人の能楽師を連れてきたことが、佐渡で「能」を広めるきっかけになったとされています。
また、羽茂で能を盛んにした先駆者と言われる人は、大崎地区の葛原五兵衛さん、村山地区の岡崎長右衛門さん、西三川地区の金子柳太郎さんだと言われており、この方々を筆頭に羽茂全体、更には小佐渡西地域に「能」が広がっていきました。
佐渡の能は、神社に奉納する「神事能」とされていましたが、独自の進化を遂げ「庶民の能」として親しまれるようになりました。
能月間で知られる6月は、農家の方々が田植えを終え、五穀農穣を願って鎮守様への奉納能として行われています。この時期は、佐渡のいろんな箇所で観能することが出来ます。
能舞台はあの世とこの世の境目と言われています。
世阿弥が生みだした夢幻能の構成を現在も受け継いでおり、「この世のものではない亡霊」が登場することからそのように言われるようになりました。そのため、能面をつけ亡霊を演じているのです。能の多くは「あの世の人がこの世の人に出会い語る」というスタイルなのです。
舞台の作りの一般的な図がこちらです。
佐渡の能舞台は、ほとんどが神社に合併されているので、観客席は野外です。そのため、夜行われる演能は薪能になります。自然の開放感の中で、赤々と燃える炎に照らされた能舞台はとても魅力的で、初めて見る方も幽玄の世界に導かれるはずです。
かつて「草苅村」といわれた字天沢に鎮座。明治初期以前の建物と推定され、農村風景の中に溶け込んだ風格のある能舞台です。舞台は正面入母屋造、背面寄棟造の茅葺で造られています。本舞台と後座からなり、地謡座、橋掛りが鏡の間と舞台楽屋をつないでいます。天井には鐘穴も造られています。背面の鏡板には松の絵が描かれていますが、現在見ることができる松の絵は、羽茂に住まわれている方が塗り直してくださったそうです。
また、橋掛りは昭和61年に増築されたもので、茅葺屋根も、平成21年に全面「よし」というイネ科の多年草を、宮城県から調達し取り替えられ現在の姿になりました。
過去の演能記録としては、1863年「文久三年社人届定能場」に記載されており、現在は毎年6月15日の「羽茂祭り」と9月7日の「乙祭り」で奉納能が行われています。
平成9年に結成された「昭諷会」の方々や、羽茂小学校、南佐渡中学校の生徒さんも参加し、若い世代にも能が受け継がれています。小学生や中学生が舞う姿はなかなか見られないと思いますので、ぜひ一度観能していただきたいです。
こうして、薪能を毎年開催できるのも氏子や地域の方々、また県外の方で能の世界に感銘を受け、寄付をしたいと言ってくださる方が陰にいるからこそ、伝統的な舞台と能を維持し守っていけているのです。
住所 |
〒952-0504 新潟県佐渡市羽茂本郷1698 |
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TEL | 0259-88-2489 |
交通案内 |
小木港から車で約15分 |
駐車場 |
あり 2台 |
最寄りのバス停 |
一の宮入口(小木線)から徒歩5分 |
その他 |
観能時期:毎年6月15日、9月7日 |
国道350号線に面して建てられています、小泊白山神社。小泊地区は隣接する真野地区の椿尾とともに石工で栄えた土地で、各家庭の石臼を集めて奉納した石臼塚があることでも知られています。
こちらの神社に能舞台が建てられたのは明治期に変わる頃。小泊地区には多くの能楽者や愛好家がいた為、神社の移築の際に能舞台が建てられたとされています。
舞台は本舞台と後座からなり、地謡座、貴人口、天井の鐘穴もあります。背面の鏡板には松と竹が描かれています。橋掛りが鏡の間に延び、鏡の間は拝殿に接しています。
こちらの能舞台で能が行われていたのは昭和20年~30年までのことで、それ以降は集落の青年部や婦人会の方が演劇をする際に利用していたそうです。ですが、それも今から約20年前までのことで、2014年の修復工事が行われるまでに一度は取り壊す話も出ていたそうです。そこで、能舞台保存会の方々が寄付を募って屋根の修復工事を行い、茅葺屋根から銅板屋根に張り替えました。
平成24年に修復工事完成記念公演を行ってから、毎年11月の第2日曜に薪能を開催しています。2015年、2016年にはプロジェクトマッピングとのコラボレーションの薪能を行い、懐かしさと目新しさで大盛況に終わりました。
平成23年10月、県の有形民俗文化財に指定。
住所 |
〒952-0514 新潟県佐渡市羽茂小泊1494 |
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TEL | 0259-74-3413(能舞台保存会) |
交通案内 |
小木港から車で約15分 |
駐車場 |
なし |
最寄りのバス停 |
小泊(小木線)から徒歩3分 |
その他 |
観能時期:11月第2日曜 |
明治初年に能楽師の本間藤平と師匠の川口宇兵衛、さらに藤井孫三、葛原五兵衛の4人が主体となり、建てられたと伝えられている大崎白山神社の能舞台。
舞台は寄棟造妻入の茅葺屋根で本舞台と後座からなり、鐘穴も備えています。背面の鏡板には松と竹が描かれています。舞台の高さが3尺5寸(106.05㎝)もあり、佐渡で一番高いとされています。
記録に残っている最初の演能は、1863年(文久3年)ですが、この記録以前にすでに行われていました。大崎地区は佐渡の中でも特に盛んな地域とされており、多い時では境内が観客で埋まるほど、大盛況だったと記録が残っています。
平成23年10月、県の有形民俗文化財に指定。
住所 |
〒952-0502 新潟県佐渡市羽茂大崎1650 |
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交通案内 |
小木港から車で約15分 |
駐車場 |
なし |
最寄りのバス停 |
大滝学校前(渡津線)から徒歩10分 |
国道から能舞台が見える佐渡唯一の神社が羽茂上山田にあります、気比神社の能舞台です。
昭和30年くらいまで、旅芸人が芝居を行うのに使われていました。それ以後現在までは残念ながら能は披露されていません。神社には、大獅子が奉納されており、村山の祭りの際に、能舞台に置いて飾られるので、その際に獅子と鏡板に書かれた松の絵を一緒に見られるという貴重な体験ができると思います。
また、義民善兵衛碑と芭蕉句碑も境内に存在し、舞台と一緒に見ることができるのでとても風情があります。
国道沿いと立ち寄りやすい場所に能舞台がありますので、是非一度立ち寄っていただきたいです。
住所 |
〒952-0515 新潟県佐渡市羽茂上山田1133 |
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交通案内 |
小木港から車で約11分 |
駐車場 |
なし |
最寄りのバス停 |
村山(小木線)から徒歩1分 |
羽茂川沿いの杉木に囲まれた小高い丘の上に、張弓神社と能舞台はあります。年末年始には、灯篭に明りがともされ境内まで伸びる光はとても幻想的です。そんな、場所に存在する能舞台は、明治時代に建てられたと言われています。
演能の記録は約60年前に一度行われたとされており、今では地域の祭りの際や、催し物を行うときに使われることがあるそうです。修理はしておらず、建てられた当時の姿を見ることができ、松の絵も明治時代に書かれた貴重な絵をそのまま見ることができるので、ぜひ一度張弓神社に行っていただきたいです。
住所 |
〒952-0512 新潟県佐渡市羽茂大橋149 |
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交通案内 |
小木港から車で約10分 |
駐車場 |
あり 3台 |
最寄りのバス停 |
羽茂高校前(小木線)から徒歩18分 |
羽茂大崎と川茂に挟まれている滝平地区。県道81号線に白山神社の標柱があります。県道から神社は確認できず、100メートルほど登ると滝平白山神社の能舞台にたどり着けます。本殿は能舞台よりさらに高い場所に建てられています。
舞台は本舞台と後座からなり、橋掛かりが社務所と繋がっています。こちらの能舞台の建築年数は不明ですが、どの舞台よりも長い年月を感じさせる舞台です。
滝平地区にはもう一つ、能舞台が存在しました。平成18年に相川の春日神社に移設したことで知られている、滝平諏訪神社の能舞台です。
小さな集落にかつては二つも能舞台があったことから、滝平地区も大崎地区同様、能文化が盛んだったことがわかります。
住所 |
〒952-0501 新潟県佐渡市羽茂滝平152 |
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交通案内 |
赤泊港から車で約20分 |
駐車場 |
なし |
最寄りのバス停 |
滝平(渡津線)から徒歩2分 |
古くから能と深い繋がりがある羽茂地区。
能舞台が建てられてから150年ほど経つ今もなおこうして守られているのは、神社の氏子をはじめ、地域の方々や島内外の方々のご協力があるからです。
観て触れて佐渡の能の歴史と文化を感じてみてはいかがでしょうか。南佐渡にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。